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名古屋地方裁判所 昭和54年(わ)288号 判決 1979年5月14日

本籍

愛知県豊橋市花田町字中ノ坪四番地の一

住居

右同所

会社役員

荒木茂雄

大正一〇年二月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡邊咲子出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県豊橋市花田町字中ノ坪四番地の一において愛産製作所の名称でアイスクリーム充填機等の製造販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和五一年分の実際所得金額が九、四三三万四、二七一円で、これに対する所得税額が五、六一三万四、〇〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外し、簿外預金を設定するなどして所得の一部を秘匿したうえ、昭和五二年三月一五日、愛知県豊橋市前田町一丁目九番地の四所在の豊橋税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式を選択したうえ総所得金額が一、二四四万二、二〇〇円で、これに対する所得税額が六五八万二、七四七円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて右不正の行為により正規の所得税額と右申告税額との差額四、九五五万一、二〇〇円の所得税を免れ

第二  昭和五二年分の実際所得金額が八、〇六四万六、三四〇円で、これに対する所得税額が四、五六五万六、四〇〇円であるにもかかわらず、右同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五三年三月一四日、前記税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式を選択したうえ総所得金額が一、三二三万四、八〇〇円で、これに対する所得税額が七五七万三、二四六円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて右不正の行為により正規の所得税額と右申告税額との差額三、八〇八万三、一〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通及び検察官に対する供述調書

一、被告人作成の上申書七通及び証明書

一、荒木アサエの大蔵事務官に対する質問てん末書七通及び検察官に対する供述調書

一、田口敏二、井元重雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、藤井友一作成の昭和五三年一一月一七日付証明書(検察官請求証拠等関係カード(甲)記載の証拠番号5のもの。以下(甲)5のように略記する。)

一、金田正幸作成の査察官調査書

一、田口敏二、山崎政次、重川啓三、板谷道広、斉藤克夫、古屋すみ江、井元重雄作成の各回答書

一、近藤鐘、近藤士温、本多節夫作成の各上申書

一、沢田守、織田三郎、万治男作成の各証明書

判示第一の事実につき

一、藤井友一作成の昭和五三年五月一九日付((甲)2)、同年一一月一七日付((甲)45)各証明書

一、村田孝作成の査察官調査書

一、田中勇、黒田浩、飯田則夫作成の各回答書

判示第二の事実につき

一、藤井友一作成の昭和五三年五月一九日付((甲)3)、同年一一月一七日付((甲)46)各証明書

一、野沢律三、杉山肇、諸橋正俊作成の各回答書

一、瀬尾正、秦正明作成の各上申書

一、秦正明、大羽明作成の各証明書

(法令の適用)

被告人の判示第一、第二の各所為はいずれも所得税法二三八条一項、二項に該当するので、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一、五〇〇万円に処することとし、被告人において右罰金を完納することができないときは同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋省吾)

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